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第19話 神谷レンの配信

last update publish date: 2026-09-06 11:23:42

第19話 神谷レンの配信

 神谷レンが配信で月乃こはねの休止に触れた。

 それを知ったのは、夜ではなく、夕方だった。

 喫茶こもれびの閉店準備をしている時、芽衣が裏口から飛び込んできた。

「悠斗兄!」

 声が大きい。

 いつもの補給便の声ではなかった。

 弁当袋も持っていない。

 代わりに、スマホを握りしめている。

 その時点で、嫌な予感がした。

 最近の俺は、スマホを持って焦っている人間を見るだけで胃が反応する。

 便利な進化だ。

 たぶんいらない。

「何だ」

「レンが配信してる」

 カウンターを拭いていた手が止まった。

 白瀬こはるは窓際の席で、ゲームセンター用の新しいポップを書いていた。

『負けても百円。

 勝っても百円。

 でも帰り道の気分は少し違います。』

 いい文だった。

 でも、そのペン先も止まった。

 こはるは、顔を上げない。

 ただ、指が白くなるくらいペンを握っている。

「何を話してる」

 俺が聞くと、芽衣は一瞬こはるを見た。

 そして、言いにくそうに言った。

「月乃こはねの休止」

 店内の空気が、目に見えない膜みたいに張りつめた。

 こはるは、ホワイトボードを手元に引き寄せる。

 しばらくして、書いた。

【見た方がいいですか】

 俺はすぐに言った。

「見なくていい」

 こはるは、少しだけ俺を見る。

【でも、私のことです】

「だから見なくていい」

 言い方が強くなった。

 自分でも分かった。

 芽衣が、俺の顔を見て眉を寄せる。

「悠斗兄」

「悪い」

 俺は息を吐いた。

「でも、こはるが今その配信を見る必要はない」

 こはるは、ホワイトボードに書く。

【黒瀬さんは見ますか】

「見る」

【それなら】

「俺は元々あいつと関わりがある。見る必要がある」

【私もあります】

「お前は今、休止中で、療養中で、声を休ませてる」

【でも】

「でもじゃない」

 また強くなった。

 こはるの肩が小さく跳ねる。

 芽衣が間に入るように言った。

「こはるちゃん。いったん、私と奥行こう」

【逃げるんですか】

「逃げるっていうか、避難」

【同じです】

「似てるけど違う。避難は作戦」

 芽衣は、いつもより低い声で続けた。

「今、こはるちゃんが見たら、たぶん傷つく。傷ついて、また“私が悪い”になる。だから、先に悠斗兄が見る。私も見る。必要なところだけ、あとで一緒に確認する」

 こはるは、唇を噛んだ。

 ホワイトボードに書く。

【また、私だけ知らないことになります】

 その文字に、俺は言葉を失った。

 そうだ。

 彼女はずっとそうだった。

 事務所に、家族に、スケジュールに、周囲の大人に、見えるものを選ばれてきた。

 守るという言葉で、情報を遮られてきた。

 俺も同じことをしようとしているのかもしれない。

「……分かった」

 俺は言った。

 芽衣が驚いた顔をする。

「悠斗兄」

「一緒に見る。ただし、条件がある」

 こはるは顔を上げる。

「一つ。音量は小さくする。きつくなったら止める」

 こはるは頷く。

「二つ。コメント欄は見ない」

 こはるは一瞬迷ったが、頷いた。

「三つ。最後まで見る義務はない。途中でやめても、逃げじゃない」

 ホワイトボードに、こはるが書く。

【避難】

「そう。避難」

 芽衣が頷く。

「作戦です」

 こはるは、少しだけ息を吐いた。

【分かりました】

 俺は店のカーテンを半分閉めた。

 営業中ではあったが、もう夕方で客も途切れている。

 源三さんはまだ来ていない。

 佐伯さんも今日は白湯を飲んで帰った。

 商店街の外は、ゆっくり夜に向かっている。

 カウンターの上にノートパソコンを置く。

 芽衣のスマホではなく、俺のアカウントから見ることにした。

 彼女のスマホに変なおすすめや履歴を残したくなかった。

 神谷レンのチャンネルを開く。

 ライブ配信中。

 タイトルはこうだった。

『大切な友人のこと、少しだけ話します』

 吐き気がした。

 大切な友人。

 誰のことだ。

 俺か。

 月乃こはねか。

 それとも、その両方を便利に包んだ言葉か。

 再生ボタンを押す。

 画面の中に、神谷レンがいた。

 昔と同じように、整った顔。

 柔らかい照明。

 落ち着いた背景。

 高そうなマイク。

 白いシャツに薄いグレーのカーディガン。

 優しい人間の見本市みたいな画面だった。

 レンは、少し疲れたような表情を作っていた。

『今日は、いつものゲーム配信ではなく、少し真面目な話をします』

 声も、相変わらずうまい。

 低すぎず、高すぎず、聞いている側が勝手に安心する音。

『最近、仲のある配信者さんが活動を休止しました。名前を出すことは控えます。憶測を広げたいわけではないので』

 控える、と言いながら、言っている。

 名前を出さないことで、逆に誰のことか分かるようにしている。

 こはるの指が、ホワイトボードの端を握った。

 芽衣が、そっとこはるの隣に座る。

『彼女は、とても優しい子です。周りに気を遣いすぎるところがあって、背負わなくていいことまで背負ってしまう。僕も何度か一緒に仕事をしたことがありますが、本当に真面目で、ファン思いで、頑張り屋さんでした』

 こはるの顔が、どんどん白くなる。

 褒め言葉だ。

 真面目。

 ファン思い。

 頑張り屋。

 どれも、彼女を傷つける。

 レンは続ける。

『だからこそ、今回の休止は本当に心配しています。もちろん、本人が休みたい時は休むべきです。そこは間違いありません。憶測で傷つけるのは絶対にやめてください』

 正しい。

 言っていることは正しい。

 だから厄介だ。

『ただ、少しだけ気になっていることもあります。彼女の周りにいる大人たちが、本当に彼女のことを考えて動いているのか。彼女が、また別の誰かの都合に巻き込まれていないか』

 俺の喉が乾いた。

 来る。

 分かった。

 レンは、画面の中で悲しそうに目を伏せた。

『昔、僕は友人を救えなかったことがあります』

 芽衣が小さく息を呑む。

 俺は画面を睨んだ。

 友人。

 その言葉を、あいつがまだ使う。

『その友人は、とても才能がある人でした。でも、少し不器用で、周りに頼るのが下手で、結果的にたくさんの人を傷つけてしまった。僕も、もっと早く手を伸ばしていればと思っています』

 手を伸ばしていれば。

 俺は奥歯を噛んだ。

 こいつは、あの時もそうだった。

 俺が燃えた時、手を伸ばすふりをして、少し離れた場所に立った。

 安全な場所から、悲しそうに俺を見た。

 そして今度は、それを後悔として語っている。

 美談にしている。

『だから、同じことを繰り返したくないんです。今、彼女の近くにいる誰かが、本当に彼女を守っているのか。それとも、自分の過去をやり直すために、彼女を利用しているのか』

 芽衣が、低く言った。

「何それ」

 こはるが俺を見る。

 俺は、画面から目を離せなかった。

 自分の過去をやり直すために、彼女を利用している。

 それは、俺への言葉だ。

 名指しはしていない。

 でも、確実に俺へ向けている。

 レンは、眉を寄せた。

『もちろん、誰かを責めたいわけではありません。僕にそんな資格はありません。ただ、近くにいる人ほど、本人の苦しみに気づけないことがあります。善意のつもりで、相手を追い詰めてしまうこともある』

 こはるのホワイトボードに、震える字が書かれる。

【私のせいです】

「違う」

 俺は即答した。

 声が出た。

 画面の中のレンの声より、自分の声の方が少し大きかった。

「違う。これはお前のせいじゃない」

 こはるは首を横に振る。

【私がここにいるから】

「違う」

【匿名ラジオをしたから】

「違う」

【声を出したから】

「違う!」

 思わず強く言ってしまった。

 こはるが固まる。

 俺はすぐに息を吐く。

「悪い。でも、違う。燃やそうとしている奴が悪い。お前が声を出したから悪いんじゃない」

 芽衣も頷く。

「こはるちゃん、今のは本当に違う。あの人、言葉の置き方がずるい。誰の名前も出してないのに、みんなが勝手に探すようにしてる」

 こはるは、画面を見る。

 レンはまだ話している。

『最近、名前を出さない匿名の配信も少し話題になっているようです。温かい場所なのかもしれません。そこに救われている人もいるのかもしれません。ただ、その声が誰かを思わせるからといって、憶測で騒ぐのはやめましょう』

 やめましょう。

 そう言いながら、話題に出した。

 匿名ラジオを。

 声が誰かを思わせる、と。

 わざわざ。

 芽衣が立ち上がった。

「消そう」

 俺はパソコンを閉じようとした。

 だが、こはるが首を横に振った。

【最後まで】

「見る必要ない」

【見ます】

「こはる」

【逃げると、もっと怖いです】

 その字は震えていた。

 でも、目は逃げていなかった。

 俺は、マウスから手を離した。

 レンは、画面の中で優しく笑っている。

『僕からお願いです。彼女の休止について、過度な詮索はやめてください。匿名配信についても、誰かと結びつけて騒ぐのはやめてください。もし彼女が本当に休んでいるなら、静かに待ってあげてほしい』

 正しい。

 あまりにも正しい。

 だから、コメント欄はレンを称賛しているのだろう。

 俺たちはコメント欄を見ていない。

 見ていないが、想像できる。

 レンくん優しい。

 さすが。

 大人だ。

 心配してくれてありがとう。

 何か知ってるの?

 匿名配信って何?

 あの声って、もしかして。

 想像だけで、胃が痛くなる。

『僕も、できることがあれば力になります。昔、友人を救えなかった僕だからこそ、今度は間違えたくない』

 レンは、最後に少しだけ頭を下げた。

『どうか、彼女が安心して戻れる場所を、みんなで守ってあげましょう』

 配信は、そこで一区切りついた。

 俺はパソコンを閉じた。

 店内が静かになる。

 遠くで、商店街の自転車のブレーキ音がした。

 こはるは、顔を伏せている。

 芽衣は、怒りで目を潤ませていた。

「何あれ」

 芽衣が言った。

「全部、正しいみたいな顔してた」

「ああ」

「でも、全部こっちに火が来る言い方だった」

「ああ」

「最悪」

「ああ」

 俺はそれしか言えなかった。

 神谷レンは、俺たちが一番嫌がる形で来た。

 罵倒ではない。

 暴露でもない。

 直接攻撃でもない。

 心配。

 お願い。

 憶測をやめよう。

 守ってあげよう。

 そういう綺麗な言葉で、匿名ラジオとこはると俺を、ひとつの疑惑の輪の中に置いた。

 こはるは、ホワイトボードに書いた。

【私、ここを出ます】

 俺は、息を止めた。

 芽衣も固まった。

「何言ってる」

 俺の声が低くなる。

 こはるは、泣いていなかった。

 泣いていないのが、逆に怖かった。

【私がいると、黒瀬さんがまた燃えます】

「違う」

【商店街も】

「違う」

【芽衣さんも】

「違うって言ってるだろ」

 こはるの手が震える。

【違わないです】

 文字が荒くなる。

【もう、始まっています】

 その通りだった。

 認めたくないが、始まっている。

 レンの配信で、匿名ラジオの存在は知る人が増える。

 声が似ているという疑惑も広がる。

 クロユウという名前も、また掘り返される。

 でも。

「だから出ていくって、それでどうする」

 俺は聞いた。

 こはるは答えない。

「事務所に戻るのか。家に戻るのか。どこか一人でホテルにでも行くのか」

 こはるは、ホワイトボードを握りしめる。

【分かりません】

「分からないのに出ていくな」

【でも、ここにはいられません】

「何で」

【迷惑です】

「もう聞き飽きた」

 強く言った。

 こはるが顔を上げる。

 俺も、自分の声が荒れているのが分かった。

 でも、止まらなかった。

「迷惑だ。確かに迷惑だよ。店はざわつくし、ラジオは見つかりかけるし、神谷レンは面倒くさいし、俺の胃は毎日死にかけてる」

 芽衣が息を呑む。

 こはるの顔が歪む。

「でも、迷惑だから出ていけなんて誰も言ってない」

【言われる前に出ます】

「それが一番困るんだよ!」

 声が、店内に響いた。

 こはるがびくっとする。

 俺は、カウンターに手をついた。

 自分の手が震えている。

「ごめん。怒鳴りたいわけじゃない」

 息を整える。

「でも、黙って消えるのはやめろって言っただろ。消えたら探す。探す人間がいる。芽衣も、源さんも、真柴さんも。俺も」

 こはるは、涙を浮かべる。

【私がいなければ】

「その言い方はやめろ」

【でも】

「こはるがいなければ、って言うな」

 俺は、やっと言葉を選んだ。

「お前がいなければ、匿名ラジオはなかった。トマトのポップも、ロボットのポップも、まずいコーヒーの黒板もなかった。役に立たない日のコメントもなかった。あの若い二人も、たぶん白湯なんか作ってない」

 こはるは泣きながら首を振る。

【でも、黒瀬さんが傷つきます】

「傷ついてるよ」

 正直に言った。

 こはるの目が見開かれる。

「神谷レンの声を聞くだけで胃が痛い。クロユウって言われるのも怖い。俺がまた燃えるのも怖い。こはるの声が特定されるのも、商店街に変な奴が来るのも、全部怖い」

 芽衣が、何か言おうとしてやめた。

 俺は続ける。

「でも、怖いからって、お前を一人で外に出すのはもっと嫌だ」

 こはるの涙が落ちた。

 俺は少し声を落とす。

「こはる。逃げてもいい。でも、行き先を決めてからにしろ。誰かに言ってからにしろ。逃げるなら、逃げる準備をして逃げろ。雨の中に倒れる逃げ方は、もうするな」

 こはるは、ホワイトボードを持つ手を下ろした。

 涙だけが、ぽろぽろ落ちる。

 芽衣が、ゆっくり口を開いた。

「こはるちゃん」

 こはるは芽衣を見る。

「私も、嫌だよ」

 芽衣の声は震えていた。

「こはるちゃんがいると、正直、面倒は増えた。卵焼きの消費も増えた。白湯の温度にも気を遣うようになった。父さんがツナマヨおにぎりに本気出し始めた。商店街も何かそわそわしてる」

 こはるは、泣きながら少しだけ困った顔をした。

「でも、それが嫌なわけじゃない」

 芽衣は続ける。

「こはるちゃんがいなくなったら、私はたぶん怒る。めちゃくちゃ怒る。悠斗兄にも怒るし、自分にも怒るし、神谷レンにも卵焼きで殴りたいくらい怒る」

「だから卵焼きを武器にするな」

 俺が言うと、芽衣は泣きながら睨んだ。

「今、真面目な話」

「はい」

 芽衣は、こはるに近づいた。

「迷惑かけていいって言ったじゃん。黙って消えるより、その方がいいって、悠斗兄が言ったじゃん。私も言ったじゃん。だったら、今もそれ使ってよ」

 こはるの唇が震える。

 声が、少しだけ出た。

「……迷惑、かけます」

 掠れた声。

 芽衣の目から涙が落ちる。

「うん」

「……ありがとう」

「どういたしまして」

 芽衣は、こはるを抱きしめた。

 こはるは最初固まっていたが、やがて小さく泣き出した。

 俺は、その場に立ったまま、深く息を吐いた。

 レンの配信は、確実に火を近づけた。

 だが、まだ店の中には入れていない。

 そう思いたかった。

 しかし、現実は甘くなかった。

 夜になって、ラジオ用アカウントの通知が増え始めた。

 直接的な悪意は少ない。

 だが、憶測が混ざっている。

【レンくんの配信から来ました】

【匿名ラジオってここ?】

【声の人、誰かに似てる気がする】

【月乃こはね休止と関係ある?】

【クロユウって名前久しぶりに見た】

【昔炎上した人が関わってるってマジ?】

【憶測やめようって言われてるけど気になる】

 気になる。

 その言葉が、いちばん怖い。

 悪意ではない。

 ただの好奇心。

 でも、好奇心は時々、悪意より遠くまで走る。

 こはるは、通知を見ていない。

 見せていないのではなく、本人が「今は見ません」と書いた。

 避難。

 そういうことにした。

 芽衣はこはるの隣で、白湯を差し出している。

 俺は通知を確認しながら、必要なものをミュートし、危ないコメントを非表示にしていた。

 手が震える。

 昔の炎上が戻ってくる。

 あの速度。

 あのざわつき。

 誰かが俺の名前を掘り起こす感覚。

 クロユウ。

 その名前が画面に出るたびに、胃の奥が冷たくなる。

 だが、今度はカウンターの向こうに芽衣がいる。

 ソファにはこはるがいる。

 奥には、冷めかけの白湯がある。

 日向弁当から持ってきた卵焼きもある。

 それだけで、前より少しだけ踏みとどまれた。

 その夜、ラジオは中止にした。

 代わりに、短い投稿を出した。

『今夜の配信はお休みします。

 番組や声について、特定の個人と結びつける投稿・問い合わせにはお答えしません。

 ここは、夜の商店街の小さな明かりです。

 誰かを探す場所ではなく、少し息をする場所として続けられるよう、見守っていただけたら嬉しいです。』

 投稿する前に、こはるにも見せた。

 こはるは、ホワイトボードに書いた。

【私も、ここを続けたいです】

 俺は、その文字を見た。

「じゃあ、続けよう」

【怖いです】

「俺も怖い」

【でも】

「でも?」

 こはるは、少しだけ迷ってから書いた。

【逃げる場所じゃなくて、帰る場所にしたいです】

 その言葉を見て、俺は何も言えなかった。

 それは、第2章の終わりに言うべき言葉のような気がした。

 まだ、そこまでたどり着いていない。

 でも、こはるの中で、その種はもう芽を出していた。

 芽衣が横から覗き込み、鼻をすすった。

「また泣かせに来るじゃん」

 こはるは慌ててホワイトボードに書く。

【泣かないでください】

「無理。明るくない日だから」

「今日もか」

 俺が言うと、芽衣は涙目で笑った。

「今日は全員、明るくない日でいいでしょ」

 こはるは、小さく頷いた。

 俺も頷いた。

 その夜、喫茶こもれびの灯りは、外から見えないように少しだけ落とした。

 でも、完全には消さなかった。

 店の奥で、白湯を飲む音がする。

 芽衣が小声で「卵焼き食べる?」と聞く。

 こはるが、かすれた声で「あとで」と答える。

 スマホはまだ震えている。

 画面の向こうでは、レンの綺麗な言葉が広がっている。

 それでも、俺たちは店の中にいた。

 戸の外に置くものを決めながら。

 店の中に残すものを、少しずつ確かめながら。

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